6.「空気が支配する国」での生き抜きかた。

まず最初に申し上げたいのは、これは「べき論」ではなく「好き嫌い」の問題だということだ。少なくともぼくはそう認識している。 「空気」の支配の中で心地よく過ごしたければそうすればよいし、「空気」の支配を嫌うのなら、その対策を取らなければならない…

5.「空気」と「世間」~『空気が支配する国』を読んで。

〈世間とは、いったい何の事でしょう。人間の複数でしょうか。どこに、その世間というものの実体があるのでしょう。けれども、何しろ、強く、きびしく、こわいもの、とばかり思ってこれまで生きて来たのですが、しかし、堀木にそう言われて、ふと、 「世間と…

4.なぜ我々は「空気」を研究しなければならないか~『空気が支配する国』

『空気が支配する国』(物江潤 新潮新書)を読んでつらつらと。 なぜ我々は「空気」を研究しなければならないか。それは「空気」が我々をわずらわせるからである。 古代ギリシャの賢人エピクロスはこう書いている。 〈かりに天界・気象界の事象にかんする気…

3.『空気が支配する国』の独自の視点は、「空気」による支配を一部肯定したところにある、という話。

物江潤氏の新著『空気が支配する国』(新潮新書)を読みながら、つれづれなるままに空想を遊ばせている。週末だから脱線する。 山本七平氏による「空気」の発見以降、知識人による「空気」論というのはいくつかある。 物江氏の『空気が支配する国』の独自の…

2.「人」と「人間」-『空気が支配する国』を読んで。

〈しかし人が人間関係においてのみ初めて人であり、従って人としてはすでにその全体性を、すなわち人間関係を現している、と見てよいならば、人間が人の意に解せられるのもまた正しいのである。だから我々は「よのなか」を意味する人間という言葉が人の意に…

1.『空気が支配する国』と『プリンシプルのない日本』

それは2019年4月1日、午前11時50分のことだった。人生ただ一度のことだったのでよく覚えている。生まれて初めて、「空気読んで…」と口にしてしまったのだ。だって、これから新元号が発表されるというので診療所でテレビの前にみんなで釘付けになっていたら、…

病院経営万事研修その7-愛・おぼえていますか。

「働いている人が幸せでなければ、利用者を幸せにはできない」 10年ほど前にデンマークの高齢者施設で聞いた言葉だ。デンマークではそのころ、介護施設で働く人々の待遇改善を求める社会運動が繰り広げられていたという。 T君、誘ってくれてありがとう。Oさ…

病院経営万事研修その6ー求む、『サイゼリヤのエンジニアリング部が実現するスゴい仕組み大全』(仮題)

〈我々のもう一人の被験者、リコ・メイデンという名の労働者は、仕事の中でこの感情をしばしば経験した。彼はジュリオと同じ工場のベルトコンベアーでジュリオから少し離れたところで働いている。彼の部署の前を通るユニット〔製品の部分になる部品のまとま…

病院経営万事研修その5-「仕組み」と科学とノンファット

〈セントラルキッチンを作り、そこから2つの店に下準備を済ませた食材(半加工品)を運ぶようになって気がついたのは、運搬による質の劣化だ。運搬といっても、ほかの2店は、駅を挟んで反対側の商店街と、隣の駅から歩いてすぐの所にあり、セントラルキッチ…

病院経営万事研修その4-オペ室看護師はフライドポテトの夢を見るか。

〈サプライヤーの一人が、ある日私にこう言った。「レイ、君はハンバーガービジネスを行っているんじゃない。フライドポテトビジネスだ。何が秘訣かは知らないが、君のところのポテトは、このあたりでは最高だよ。これを求めて客はやってくるんだ」〉(レイ…

アメリカ大統領選直前に、『隠れトランプのアメリカ』を読む。

食材に旬があるように、話題にも旬がある。 今読んでいる本に興味深い一節があった。トランプ大統領についてのコメントだ。 〈トランプ自身、実業界出身だけあって、労働者の気持ちを理解していると言われる。共和党関係者は「トランプは政治関係者の中で、…

病院経営万事研修その3-「合理化の罠」と「努力の罠」

カナダ・ニューブランズウィック州のそのホットドッグ屋は大繁盛していた。そう、彼が帰ってくるまでは。 〈ある日老人の息子が、ハーバード大学で経営学の修士号と経済学の博士号を取得して帰ってくる。息子は父親の経営ぶりを一目見るなり言う。「なんとい…

病院経営万事研修その2~ホットドッグ・スターの悲劇。

外食産業からさまざまなことを学びたい、という話をしている。 余計なコンフリクトを避けるため、いくつかの土地にまつわる話をする。新宿、ニューブランズウィック州、門真である。 ぼくのいる医療業界では「経営」とか「利益」とか「生産性」といった言葉…

病院経営万事研修その1~明日の医療を『ラッセ』に学ぶ。

「タカハシさん、ぼくが前にいた製造業界ではね、工員が1メートル歩いたら経費はいくらになるかまできっちり計算してますよ。それと比べると、医療業界はドンブリ勘定もいいとこですね」。 大阪のとある病院に見学に行ったときに案内してくれた経営企画室の…

「子どもは言われたようには育たない。育てられたように育つ」と彼女は言った。

「子どもは親に言われたようには育たない。親に育てられたように育つ」 昔聞いたとあるママさん看護師さんの名言である。 実際の発音に忠実に記載すると、「親に育てられたよおぉぉぉぉぉおおうに育つ」となる。「お」の連続した部分に万感の思いが込もる。 …

外科医が蝶ネクタイをしてたわけ。

もし自分が主治医を選ぶとしたら、ナシーム・ニコラス・タレブは言う。 いかにも医者みたいな、〈銀縁のメガネ、すらっとした体格、繊細な手、落ち着いた話し方、上品な身ぶり、整えられた白髪。映画で外科医になりきるとしたら、こういうイメージだ。〉みた…

旅するように暮らしたい。

〈どこにいても そこで生まれた気がしてる〉(久保田利伸『Timeシャワーに射たれて』) Timeシャワーってなんだ、シャワーに「打たれて」じゃなくて「射たれて」なのか痛そうだなとか思うけども、かつて「その土地で暮らすように旅をし、旅をするように暮ら…

「そこがいいんじゃない!」~中條医院を引き継いで丸3年になりました。

「そこがいいんじゃない!」 我が心の師の一人、みうらじゅん氏、いやみうらじゅん師の言葉だ。 憧れの人ボブ・ディランに「彼は定職はないのか?」と心配されるほど多彩な仕事をしているみうら氏いやみうら師も、果たしてこれはウケるのだろうかと不安にな…

個と組織、自由と束縛、破壊と創造、闘争と逃走ー『半沢直樹』最終回に思う。

『半沢直樹』が最終回となってしまった。非常に堪能したので少々『半沢ロス』気味である。 はじめはいろいろツッコミを入れてたんですけど、途中から細かいことはどうでもよくなりました(笑)。ただひたすら大和田と黒崎を見たい、という欲求が…。もちろん…

部屋とTシャツと私と不易と流行。

「一番ゴージャスなお洒落は、真っ白なTシャツである」。 とある有名なデザイナーの言葉らしい。30年ほど前、朝日新聞の文化欄のコラムか何かで読んだ。デザイナーの名前も覚えているが、ググッても確認できなかったのでデザイナーの名前は書かない。原典を…

積ん読とトキメキと(完結編)

積ん読vsトキメキ派の話。 積ん読派の宿敵であるこんまり氏はすでに、世界進出を果たしている。 「KonMari」や「Kondoする」は英語として成立しているそうだし、敵ながらお見事というほかはない。 こんまり氏をスターダムに押し上げたのはネットフリックスの…

9月12日土曜日、船橋市で『パーキンソン病の診断加療とケア』を講演させていただきました

去る9月12日土曜日、船橋市の塚田公民館で『パーキンソン病の診断加療とケア』を講演させていただきました。 コロナ対策のため人数を減らしソーシャルディスタンスを保った講演会でした。 小雨の中、お集まりいただいた皆様、ありがとうございました! 3…

積ん読とトキメキと(その9)

〈電子書籍も紙と変わらず、積ん読しまくっている。物理的積ん読は、生活空間に置かれた本の存在によって無言の圧力を感じられるのだけど、電書の場合単なるデータだ。時間が経つにつれて、買ったタイトルも無料のタイトルも等しくリストの一部となって、ク…

積ん読とトキメキと(その8)

しつこく積ん読派とトキメキ教の話。 〈かりに天界・気象界の事象にかんする気がかりとか、われわれにとって死が何ものかでありはすまいかという気がかりとか、さらに、苦しみや欲望の限界についての無理解とか、これらのことどもがすこしもわれわれを煩わさ…

積ん読とトキメキと(その7)

大空のもとに生きる人は、空の広さを知る。たとえその空を飛ぶことはなくとも。そびえたつ山のもとに生きる人は、山の高さを知る。たとえその山に登ることはなくとも。青い海のそばに生きる人は、海の深さを知る。たとえその生みに潜ることはなくとも。そし…

積ん読とトキメキと(その6)

積ん読派とトキメキ教の戦いは続く。 積ん読派とトキメキ教の戦いについて書いている。 知識社会において、知は力である。本は読まなくても持っているだけで力になる。そう信じてきたし、そう信じている。なぜなら、よる夜中でも台風の日でも、何か調べたい…

積ん読とトキメキと(その5)

〈作家のウンベルト・エーコは博学でものを見る目があり、人を飽きさせない数少ない学者の一人だ。彼は(三万冊にも及ぶ)膨大な蔵書を使って、やってくるお客を二種類に分類している。「おお!シニョーレ・プロフェッソーレ・ドットーレ・エーコ!大変な蔵…

積ん読とトキメキと(その4)

〈「あなたなら、たとえばうちの四十年史を担当されたとして、どういう本を造られますか」おれはまた天井を見上げてからゆっくりと答えた。「十ポイント、写植の十四級の大きさですね。歯送りをゆったりと取って行間は全角アキ。四十一字詰め十五行。余白も…

積ん読とトキメキと(その3)

積ん読vsトキメキの話。 積ん読は今や国際語だ。Wikipedia英語版にはちゃんと「tsundoku」の項があるし、2018年にはイギリスBBCで「tsundoku/積ん読」の特集が組まれた(*)。 「積ん読」を一躍世界に広めた功績者の筆頭はもちろんエラ・フランシス・サンダ…

積ん読とトキメキと(その2)

就いてみたい職がある。図書館の住み込み管理人だ。 〈(略)(留学から)帰ってくると上智大学の講師になり、志願して図書館の住込み宿直員になった。図書館のまだ空いているところに私の本を置いてもらい、同じ建物の中の夜警宿直者用の小部屋に住まわせて…