現代社会において、いわゆる「頭の良さ」とはメタ認知である。 たくさんの知識を持っているということは素晴らしい。だが、インターネットと知の結合により、知識そのものを持っていることの相対的価値は下がっている。自分自身で知識を持つことの大事さはい…
「読んじゃったから、これあげるよ」 別れ際に旧友Rが一冊の本をぼくに手渡した。 ありがとう。もらってばかりじゃ悪いから、なにかお返しを…そう言いながらぼくは自分のカバンをあさり、かわりに別の本をRに渡した。物々交換成立。 〈「俺たちは葬式にもウ…
やり遺したことがある。 社会制度というものは、その国やその社会の国民性や国民感情の上にある。 だから医療制度を考えるには、その国その社会の死生観や倫理観を熟知しなければならない。 制度を国民生活を入れる器とすれば、器におさまる国民生活をよく分…
社会がどう変わってゆくかに野次馬的関心がある。まだまだ予断を許さないとはいえ、2022年のゴールデンウィーク明けにコロナ感染の爆発がなかったことは日本社会に自信を与えた。大多数がワクチン接種を終えたあとであれば、2022年のゴールデンウィークくら…
「私は自分と同意見でない人は許すが、彼自身のもっている意見に一致しない人間は許せない」 フランス革命のころの政治家タレーランの言葉だ(河盛好蔵著 『エスプリとユーモア』岩波新書1969年 p.114)。 プリンシプルのない人とはつきあいづらい。 あっち…
「科学者になるには『あたま』がよくなくてはいけない」。同時に「科学者はまた、『あたま』が悪くなくてはならない」。そんなことを、寺田寅彦が書いている(『科学者とあたま』。角川文庫『読書と人生』p.91-97)。 もちろんあたまが良くなくては科学研究…
若い人へ。 ネット上では社長や教授のハイパーアクティブなツイートを見かける。「何者かに成れ」という圧力が強い世の中である。 だが、あれを見て「俺はまだまだだ」と凹む必要はない。 なぜなら、社長や教授は『鬼滅の刃』の“柱”みたいなもの、渋澤栄一の…
〈『うる星やつら』は究極のダイバーシティ社会〉。そんなことを深井龍之介氏が書いている(『Forbes JAPAN』2022年6月号p.125)。〈『うる星やつら』には、悪態ばかりついている二重人格の女の子(ラムの友達ラン)もいれば、とんでもない食いしん坊の僧侶…
遠藤周作氏の書いたものの中に、「タバコを吸う人はタバコを吸う医者にかかれ。酒飲みは酒飲みの医者にかかれ」という趣旨のものがあったように思う。タバコ飲み(懐かしい言葉ですね)の気持ちはタバコ飲みにしかわからないし、酒飲みの気持ちは酒飲みにし…
浅田次郎氏に『母の待つ里』という作品がある。これ以上は書けない。 マエストロの作品構成力、人物造形、物語の運びが冴える逸品であり、45歳以上の都市生活者および都市近郊生活者なら刺さると思うのでぜひ。お読みいただければ今回のテーマと隣接する作品…
〈高齢社会への道を進む日本において、決定的に欠けているのは大人の社交場なんです。〉 〈(2030年には)オタク文化の最初の世代が高齢者になるのですから、消費活動もその延長線上にあるはずです。〉(河合雅司・牧野知弘『2030年の東京』祥伝社新書2022年…
「頭が良い」というのはどういうことだろうか。 19世紀イギリスの随筆家P.G.ハマトンは「頭の良さ」を知能(インテリジェンス)と知性(インテレクト)に分けて論じている。 ハマトンによれば、知能とは目の前のタスクを間違いなくうまく処理する実務的な能…
水戸と言えば納豆。 しかし水戸で納豆が名物になったのは、明治時代のことだという。 歴史作家の河合敦氏の著作『この歴史、知らなくてすみません。』(PHP文庫 2018年)によれば、納豆を水戸の名物にしたのは笹沼清左衛門。 〈清左衛門は幕末の水戸に生まれ…
〈「いつかやる/多分やる」 将来の、ある時点でやりたくなる可能性のあることを常に最新の状態にしておくと、便利なだけでなく、人生にも希望が湧いてくる。〉(デビッド・アレン『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』二見書房2008年p.61) 人生の後半戦…
〈「いつかやる/多分やる」 将来の、ある時点でやりたくなる可能性のあることを常に最新の状態にしておくと、便利なだけでなく、人生にも希望が湧いてくる。〉(デビッド・アレン『はじめてのGTD ストレスフリーの整理術』二見書房2008年p.61) 人生の後半戦…
〈何事にせよ、ひとつのことに精通するには、一生の大半という長い年月が必要とされることは誰もが知っています。ところがこれがあまりにもわかりきったこのなので、かえってのん気な気持ちになってしまい、時間を節約すべき時に浪費し、時間を無駄にしない…
『なりたい自分』のための時間投資と、『ありたい自分』のための時間投資は異なる。 『なりたい自分』のための時間投資はいわば新規事業用の資金のようなものでまとまった量の確保が必要だが、『ありたい自分』のための時間投資は日常生活用のお小遣いみたい…
<休みになりゃ暇だし 仕事は暇なし> (B’z 『BIG』) 人生後半戦の時間とお金の使いかたについて考えている。 まさに冒頭の歌詞のような心境で、ぽっかり空いた日曜昼間の時間の中でこれを書いている。 さて、10年後に『なりたい自分』追求もよいけれど、…
「ストップ・トゥー・スメル・ア・ローズ。道に咲くバラの匂いを嗅ぐために立ち止まる。そんな人生を、ぼくは送りたいね」 そう言ったのはオーストラリア人のティムだった。今から20年以上前のこと。 『なりたい自分』と『ありたい自分』のことを考えて、そ…
良い中学や高校に入るため子ども時代を耐えて頑張る。 良い大学に入るために中高時代を耐えて頑張る。 良い会社に入るために大学時代を耐えて頑張る。 良い引退生活に入るために会社時代を耐えて頑張る。 良い墓に入るために引退時代を耐えて頑張る。 最後に…
お金と時間の使い方は、年代によって変わってくる。何が正しいかの絶対解はない。 たとえば若いときにがむしゃらに働いて質素倹約して早期に引退するFIREというライフスタイルがある。 FIREも資産形成もよいが、若い時に時間とお金を突っ込む価値があるのは…
〈「とてもいいストーリーじゃないか」少年の父親は言った。「どんなにいい出来か、自分でわかってるかい?」 「お母さんがパパに送りつけたのは心外だったよ、ぼく」 (略) 「しかし、おまえがあの小説で書いたカモメについてはどこで知った?」 「パパか…
〈(略)「舜が歴山で耕作していた時、田んぼに行っては天を仰いで号泣したと聞きます。どうして号泣したのでしょうか」。 孟子が答えた。「親に愛されないことをうらめしく残念に思い、また親を思い慕ったのだ」。 (略) 『自分は力を尽くして田んぼを耕し…
〈いつもの散歩コースの神社の階段を降りて大通りに出た。 すると、頭にすっぽりと黒いフードをかぶった暗い目をした男とすれ違った。 一瞬目があったけど、世界への恨みを募らせたような目つきが怖くて思わず目を背けた。 もう少し目を合わせている時間が長…
生きることの天才や達人もいれば、逝くことの天才や達人もいる。文学作品の中にも、そうした逝きかたの天才や達人がいる。 〈(略)臨終だといっても、友人や親戚の者は喜ぶでもなければ、悲しむでもない、いや、かんじんの死んでゆく当人さえもが、その未練…
先日マックでJKが(注)。 「なんか進路で迷っちゃってー。超アッタマいーA大学にギリで入るのと、まあまあのB大学行ってヨユーでトップでいくのとどっちがいいかなーって」 「超わかるー。なんかまわり超アタマいいと、その中で深海魚みたいに落ちこぼれる…
【備忘録。Twitterで書いたやつのまとめなので断片的で、話があちこちに飛びますが覚え書きとして】 「古文漢文は役に立たないから不要」という人がいる。とんでもない、という話。 ・「春は揚げ物」とか「春はあげぽよ」とかで笑えるのは古文という共通の知…
文系理系の線引きにこだわりはないが、以下仮説。 文系の学問ではどこかしらに人間の意志や意図が入る(仮説)。理系の学問では徹底して人間の意志や意図を排除する。 だから文系的思考の人たちは感染症流行やその抑制に対しても「裏で誰かの意志が働いてい…
破滅と確率についてタレブはこう語っている。 〈(略)「重要なのは順序であり、破滅の可能性があるところでは費用便益分析がまるきり無意味になる」(略)〉(ナシーム・ニコラス・タレブ『身銭を切れ』ダイヤモンド社 2019年 p.388.原題『SKIN IN THE GAME…
「見るべきほどの事をば見つ」。 平家物語で新中納言知盛の最期の言葉である。 知盛は、見るべきものは全て見た、と言ってこのあと海に身を投げる。 文脈的には「見るべきほどの事」とは平家一門の最期のことだという(『平家物語』角川ソフィア文庫 平成十…