コロナ禍と確率ー「アンサンブル確率」と「時間確率」

破滅と確率についてタレブはこう語っている。 〈(略)「重要なのは順序であり、破滅の可能性があるところでは費用便益分析がまるきり無意味になる」(略)〉(ナシーム・ニコラス・タレブ『身銭を切れ』ダイヤモンド社 2019年 p.388.原題『SKIN IN THE GAME…

「見るべきほどの事をば見つ」の話。

「見るべきほどの事をば見つ」。 平家物語で新中納言知盛の最期の言葉である。 知盛は、見るべきものは全て見た、と言ってこのあと海に身を投げる。 文脈的には「見るべきほどの事」とは平家一門の最期のことだという(『平家物語』角川ソフィア文庫 平成十…

「Forget about it!」。

人生に力強さを与える言葉というものがある。ぼくの場合は「Forget about it!」がその一つだ。 ブルックリン生活が長かったわけではない。アルパチーノとジョニー・デップの映画『フェイク』(原題『DONNIE BRASCO』)で覚えた。 主人公のジョニー・デップが…

コロナ禍とアイン・ランド『肩をすくめるアトラス』

世界はふたつに分けられる。 ぶつくさ文句を言いつつも問題解決に関わろうとする者たちと、文句だけ言っていれば誰かがどうにかしてくれると思っている者と。 アイン・ランド『肩をすくめるアトラス』(“Atlas Shrugged”)の主題の一つはたぶんそれで、少な…

おごりおごられ割り割られ。

日本の習慣の一つに「割り勘」がある。 みなで会食をして、会計を単純に人数で割るという方法で、日本で「割り勘」をしたことがない人はいないと思う。 たくさん飲み食いした人もそうでない人もいるので「払い損」の人が必ず出てくるので、昨今ではお酒飲ま…

なぜ赤穂浪士の討ち入りは日本で国民的支持を得たかー清水克行著『喧嘩両成敗の成立』より

旧暦の12月14日は赤穂浪士の討ち入りの日だという。正直に告白すると、赤穂浪士に感情移入したことはない。 浅い知識しかないが、浅野匠頭が吉良に切り掛かって吉良は逃げ、浅野匠頭だけ処罰されたという話で、それに対し浪士たちが怒って恨みを晴らすため討…

ネットニュースに連日「ひろゆき」氏が出てくる「裏」の事情

「それあなたの感想ですよね。データとかあるんですか」 道行く小学生がそんなことを言っていた。 ネットニュースを見れば連日のように「ひろゆき」氏が社会事象を「斬って」いるし、なぜこんなに「ひろゆき」氏的な物言いがウケているのだろうかと考えてい…

人生を豊かにするのは「tutoyer(トュトワイエ)」の関係性。

フランス語に「tutoyer(テュトワイエ)」「vouvoyer(ヴヴォワイエ)」という言い方がある。 「tutoyer」は「君/ぼく、オレ」の関係性で、「vouvoyer」は「あなた/私」の関係性で、もちろん動詞の活用からなにから全部違う。 ぼくは今まで基本的に日常生…

”幸せ”は、熱と炭水化物で出来ている。

〈なるべく小さな幸せと なるべく小さな不幸せなるべくいっぱい集めようそんな気持ちわかるでしょう〉(『情熱の薔薇』)ここのところ“幸せ活動”について考えている。限られた人生の中で、“幸せ”がやってくるのをただ待っているのではダメで、自ら積極的に“…

”幸せ活動”とは何か~幸せは、いつだってリバーサイドにある。

「ブラザー、明日はオレ“幸せ活動”だから。また明後日な」 “幸せ活動”? 20歳の僕はきょとんとした。 「“幸せ活動”はさ、休みの日に彼女と会ったり友達と遊んだりすることさ。じゃあまたな、ブラザー」 銀座のビヤホールでひと夏ホール係として働いていた僕…

なぜあんな立派な人がコロナやワクチンの陰謀論にハマるのか(4)~陰謀論は人間の闇の欲望にフィットする&対策

2020年から始まったコロナ禍で、何人もの人が陰謀論に取りつかれるのを見た。その中には社会的地位や名誉のある立派な人もいて、なぜあんな立派な人が陰謀論にハマるのだろうかと不思議に思ってきた。 ずっと考えてきて、少しだけ答えが見えた気がする。 人…

美容業界では「新規顧客は基本的に何がしかの不満を抱えている」という話。

「どうしても若いうちはいきなり100点を狙いにいっちゃいますから。そこに力みが出ちゃう。ほんとはまず手堅く80点狙いにいかなきゃいけないのにね」 知人の美容師さんが言った。 「美容室の新規のお客さんて、基本的に何か前の店に不満があってお店を変えて…

コロナワクチン陰謀論の見破り方(tweet詰め合わせ)

コロナワクチン接種が急速に進むなか、ワクチン陰謀論に基づく反ワクチンのネット言説は根強い。 たまたまぼくの生業が医業なのでワクチン陰謀論にからめとられることはなかったが、生きている限りいつほかの分野の陰謀論にからめとられてしまうかわからない…

なぜあんな立派な人がコロナやワクチンの陰謀論にハマるのか(3)~『ファスト&スロー』を下敷きに考えると。

「なぜあんな立派な人がコロナやワクチンの陰謀論にハマるのか」ということについて考えている。 www.hirokatz.jp www.hirokatz.jp ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』によれば、人間の判断は全く異なる2つのシステムによって下されるという。 す…

残りの5kmが一番キツい

三浦半島を24時間以内に歩いて一周するという行事に参加したことがある。コースは全長100kmに設定されている。茅ヶ崎をスタートして、テクテクと歩き続けて東京湾側に抜ける。夕暮れ時には東京湾の向こうに房総半島を眺めつつ歩を進めてゆく。横須賀について…

残りの5kmが一番キツい

三浦半島を24時間以内に歩いて一周するという行事に参加したことがある。コースは全長100kmに設定されている。茅ヶ崎をスタートして、テクテクと歩き続けて東京湾側に抜ける。夕暮れ時には東京湾の向こうに房総半島を眺めつつ歩を進めてゆく。横須賀について…

なぜあんな立派な人がコロナやワクチンの陰謀論にハマるのか~複雑な世界を理解するときの落とし穴(2)

複雑なこの世界は、今日もまた複雑化を加速させる。 〈南カリフォルニア大学の研究者によると、一九八六年の人は一日平均、新聞約四〇部に相当する情報にさらされていた。それが二〇〇六年には、四倍以上の一七四部相当になった。まいにち誰かが玄関ドアのま…

なぜあんな立派な人がコロナやワクチンの陰謀論にハマるのか~複雑な世界を理解するときの落とし穴(1)

人間社会は複雑さを増すばかりだが、個としての人間はその複雑さをそのまま情報処理できるほど賢くない。そんな話をユヴァル・ノア・ハラリが書いている(『21Lessons』河出書房新書 2019年 16章「正義」)。 個体としての人間が情報処理できる関係性はせい…

【仮想記事】7月19日からワクチン接種数が急減した日本独自の意外な理由【仮想記事】

全国でのワクチン接種数、今週7月19日~7月24日の期間は少なめになるはずです。 これはファイザー社ワクチンの場合の2回目となる3週間後がお盆休みの時期になるためで、小規模の医療機関が今週は1回目接種を見送るから。 来週以降、「先週ワクチン接種が急減…

なんだろう。ウソつくのやめてもらっていいですか、週刊女性セブン『隠れ副作用死者はまだまだいる!』と近藤誠氏とYahoo!ニュース(改題)

『隠れ副作用死者はまだまだいる!』 おどろおどろしい文字が表紙に踊る。 週刊女性セブン2021年7月29日・8月5日号だ。 記事(p.154-155)の主は近藤誠氏。 がん放置療法で人心を惑わせたあとは、コロナで荒稼ぎするつもりだろうか。 近藤氏の主張の中にウソ…

職業人生後半で身に着けるべき4つの「見る目」とは。

ここのところ職業人生後半戦ということを考えている。 職業人生後半戦で養わなければならないものに4つの「見る目」がある。 「人を見る目」 「社会を見る目」 「未来を見る目」 「己を見る目」 の4つだ。 まず大前提として、いちプレイヤー、いちソルジャー…

インプットも大事、アウトプットも大事。しかし最も大事なのは思索である、という話。

インプットは大事だ。 アウトプットも大事だ。 だがインプットとアウトプットの間にあるプロセシング、人間で言えば思索というものの大事さは、近年軽視されているように思う。 良質なインプットのためには、意識的に時間を取らなければならない。 良質なア…

コロナワクチン接種、65歳未満も打てる人打ちたい人はとにかく早くと煽る理由。

自治体によってまちまちですが、いよいよ65歳未満のかたのワクチン接種が本格化します。 www3.nhk.or.jp 64歳以下 ワクチン接種 14区で6月末までに開始見通し 東京23区 | 新型コロナ ワクチン(日本国内) | NHKニュース65歳以上の方々の接種を行っています…

腹が立ったときに見習いたいのは山崎豊子とスウィフト。

腹が立った時に見習いたい人が2人いる。山崎豊子氏とスウィフトだ。 都市伝説の類いかもしれないが、医療小説『白い巨塔』が書かれたきっかけをご存知だろうか。一説には、これは山崎豊子氏の体験をもとに書かれたという。 山崎豊子氏がある時大学病院を受診…

渋沢栄一氏の新紙幣に思う。

新紙幣が渋沢栄一になる意味を考えている。集団意識というか国家意志というかそんな漠然としたもの。 経済大国から凋落しつつある今、再び「国の富」を作り出せ、ということか。 渋沢氏のような人を人為的に育てることが出来るかはわからない。 だが渋沢氏の…

コロナワクチンが余ったから破棄、なんてバカげたことが起こる理由。

「アメリカの医療制度が、コミュニタリアニズムとリバタリアニズムに基づいていることはわかりました。では、日本の医療制度はどんな理念に基づいているのでしょうか?」 ぼくがそう聞くと、間髪入れずにTさんが答えた。 「それはね、エガリタアニズムですよ…

歳なりに歳をとる(7)タンデム、あるいは旅は続く。

バトリス・ルコントの映画『タンデム』が、ずっと頭の中で流れている。老年期のラジオスター、モルテスが、おとものリヴドとともにおんぼろフォードでフランスの片田舎を行く。どこまでも、いつまでも。走り去ったあとには、何も無い。現代のドン・キホーテ…

歳なりに歳をとる(5)ワン・ファイン・メス

人生を4つの期に分け、生きていく術を学ぶ「学生期(がくしょうき)」、仕事や家のことを一生懸命やる「家住期(かじゅうき)」、浮世の義務から逃れて生を楽しむ「林住期(りんじゅうき)」、旅立つ準備をする「遊行期(ゆぎょうき)」とする。 「林住期」…

私家版『こんな仕事があったのか!』

先日、『POPEYE特別編集 こんな仕事があったのか。』(マガジンハウス)をパラパラと読んでいて驚いた。出張おにぎり屋さんという仕事があるのか。炊き立て・特別なお米と具材を持ってイベントとかに呼ばれていって、こまやかな気遣いと握り具合でおにぎりを…

歳なりに歳をとる(4)ル=グウィンと9泊10日の旅

<あなたが生まれた時、あなたは泣いていて、まわりのみんなは笑っていた。 だから、あなたが死ぬ時に、あなたは笑っていて、まわりのみんなは泣いているような人生を送りなさい。>(セルビアのことわざ) 「歳なりに歳をとる」ということを考えている。 イ…