namengedächtnis/人の顔と名前を覚える能力がイマイチな人のためのちょっとしたハック

出会った人の顔と名前を覚えるのがとても得意な人がいる。

名前を覚えるための記憶力のことをドイツ語でnamengedächtnisというのだが、もちろん読めない。この単語のことは米原万里氏のエッセイで知った。このnamengedächtnis(読めない)の優れた人というのは、一度会った人のことをとてもよく覚えていて、どこかで再会してもすぐに「○○さん!」と思い出したりする。

友人T氏もまたこのnamengedächtnis(読めない)の優れた人なのだが、一度その秘訣を聞いたことがある。
「毎日いろんな人と会うじゃない?その日の終わりにさ、その日あった人のことを思い出すようにしてるんだ」

素晴らしい秘訣だ、マネしようと思って早幾年月が経つ。

 

僕自身が一時期やっていたのは、誰かとお会いしたときにデジカメとかで記念撮影して、それをプリントして一枚はお礼状とともに相手に送る、もう一枚は自分の記憶強化用にストックして時々名刺とともに眺める、という手だ。

さてこのnamengedächtnis、そろそろしつこいから「人の顔と名前を覚える能力」とするが、たくさんの人と出会う人気稼業では必須だ。
たとえば毎日たくさんの有権者と出会う政治家の方々にとって、「人の顔と名前を覚える能力」が優れているとそれだけで強力な武器となる。芸能人や水商売の人なんかも同様だ。

人気稼業の取引相手である有権者とかファンとかは、政治家や芸能人に名前を憶えてもらっていると正直うれしい。「××さん、久しぶりですね」なんて覚えてもらっていれば感激するのがほんとのところ。有権者やファンは、自分のことを覚えてもらっているとますます応援しようと思うわけで、だから人気稼業の人にとっては「人の顔と名前を覚える能力」は武器なのだ。

実際、生き残っている人気稼業の人の多くは記憶力や「人の顔と名前を覚える能力」に長けている。鈴木宗男氏も、秘書時代には数万件の電話番号を暗記していたという(佐藤優氏の本で読んだ)。

だが、人気稼業の人すべてが「人の顔と名前を覚える能力」に長けているわけではない。そうした場合どうするか。名刺交換の場を利用する。

まず、偉いポジションになると秘書がつく。この秘書には、元気がいい若い者を任用しておくとよい。
で、どこかで誰かと出会って、「△△さん、どうもご無沙汰です!」と向こうから先に挨拶されたとする。誰だっけと思い出せなくても、すかさずこの若くて元気のいい秘書に「どーもどーも、秘書の××です!うちのセンセイがお世話になってます!」と名刺を出して挨拶するように言っておく。
そうすると自動的に秘書とどこかの誰かが名刺交換をする流れになるから、そしたら秘書に「あー□□社の◎◎さんですか!」と相手の名刺を元気よく読み上げさせるのだ。
そこからはスムーズに「◎◎さん、最近いかがですか」と呼びかけられるというわけだ。

「人の顔と名前を覚える能力」がイマイチだけれど、秘書がいない場合どうするか。やはり名刺を利用する。
どこかで一度会っているのだが、正直どこの誰か思い出せない場合、もう一度名刺交換するか微妙な空気になる。
だから定期的に、自分の名刺のデザインを変える習慣をつけておく。
そうすると「どーもどーも!名刺のデザイン切り替えまして、これが新しい名刺です」といって自分の名刺を差し出して、相手の名刺をゲットして名前を確認できるのだ。
もし相手がまるっきりの初対面でも、新しい名刺を差し出して「これ新しい名刺です。名刺のデザインを切り替えまして」と言えば、多少奇妙な感じにはなるが話題づくりのためかと解釈してもらえる(と思う)。

そんなに頻繁にデザインを変えられないよ、という方にはこんな手がある。
名刺の裏や二つ折りの名刺の一面に、3か月分ほどのカレンダーを入れておくのだ。
これだと四半期に一度、カレンダー部分だけを差し替えるだけで「名刺新しくしまして」と言える。「ぼくの名刺カレンダー付きなんですよ、以前にお会いしたのは確か…」と相手から前回あったときの情報をスムーズに引き出せるわけである。

こんなふうに「人の顔と名前を覚える能力」がイマイチであっても多少の工夫はできるわけであるが、やはり本来、お会いする方の顔と名前はしっかりと心に刻むべきだろう。上に述べたのはあくまで姑息な策で、厳しいようだが、お会いする方の顔と名前を逐一憶えていないようでは社会人としていかがなものか、と言わざるを得ない。
そもそも社会人というのは……、失礼、宅急便が来たのでこの話はまた。新しいデザインの名刺が届いたから受け取ってくる。

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